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1段減速 ベルトユニット 開発物語 その1
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写真・文/才川篤志氏, 才川知利氏
取材協力/50プロダクト 吉川芳秋
ラジコン技術 2013年2月号に掲載
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いやあ、遂に2012年のF3A日本選手権の表彰台に、「50プロダクト製」の2段減速ベルトユニツトを搭載した機体が乗りました。 また、出場した電動機16機のうち、半数の8機が同じユニットを使われていたということで、開発のお手伝い(ちょっとだけですけど…)をした者とすれば感慨深いものがありますね。 思い起こせば2006年のRC航空ページェントでお披露目したのが最初ですから、もう7年にもなるのですね〜。
あれから、いろんな方からのアドバイスをいただき、改良を重ねて今の形になった訳ですが、やはりF3Aのトップクラスの方のご指導をいただけるようになってから飛躍的に性能が向上しました(と言うか、トップクラスは要求もトップクラス…!?)。
担当ですが、私こと才川知利は、いろんなご要望に合わせるためのモーター選びや減速比の設定という、言わば「頭脳労働?」を担当しております。
それを、50プロの社長である吉川氏が図面起こしから実際の製作(技能労働?)を行い、テスト機の製作から飛行テストと評価(肉体労働?)を兄の才川篤志が行う体制となっています。
ちなみに、才川知利および篤志は50プロダクトの社員ではありませんし、一切の報酬もありません。まあ、類は友を呼ぶというか、ちょっと変わり者の好きもの同士といいましょうか。 新製品の開発の際には、メールや飛行場での会話を含め、「あ〜でもない、こ〜でもない」とやっている訳ですが、「三人寄れば文殊の知恵」の言葉どおり何気ない一言がヒントになって、更なる改良が加えられることも多々あります。
今回は、現在試作中の「1段減速ベルトユニット」の開発経過をお知らせすることで、新製品が世の中に出るまでの開発秘話(苦労話…いや、愚痴かな?)をご紹介したいと思います(タイトル写真のベルトユニット)。
まずは、基本的特徴や設定内容について、「頭脳労働者」からご説明しましょう(ところで、私は「土木工学科」卒業なのに、何で機械や電気の構想や計算をしているのでしょうか?)。
その1
何で減速するの?
50プロダクトでは、以前からギヤやベルトによる減速ユニットを販売しておりましたが、本格的なF3A用のユニット開発のきっかけは、ハッカーのC50アクロ・コンペテイションの登場の時でした。
比較的高Kvのモーターに遊星ギヤを使って減速し、大きなペラを回せるユニットです。
一般的に、大きな入力時に効率を良くするにはKvの高いモーターの方が有利になります。
また、モーターは高い電圧で使用した方が効率が良くなります。 ただし、高Kvのモーターに高電圧をかければ、当然のように物凄い回転数になりますので、直結では小さなプロペラしか回せません。ちなみにC50-13XLのKvは1,249ですから、10セル(35V)とすると、回転数は43,715回転/分にもなります。F3A機の出力を2,500Wとすれば、何と6×5のプロペラしか回せません。
いくら4万回転していても、6×5のプロペラでは5キロ弱のフルサイズ機でスタントすることは不可能でしょう。
では、これをアクロ・コンペティションのように6.7:1に減速すると、43,715÷6.7=6,525回転/分で使えることになります。同じく2,500Wで試算すると、20×12.6のプロペラが回せます。
その際の静止推力の比は、2.08倍にもなります(4,541g:9,442g)。 5キロ弱の機体に静止推力が9.3キロもあれば、余裕でスタントできますよね。
減速する理由は、高回転のモーターを減速することで“プロペラを効率良く使う”ためなのです(図表-1)。
図表-1 ●フロペラ・ピッチ、回転数試算表
直径[インチ] |
ピッチ[インチ] |
回転転数[/分] |
ワット[W] |
ピッチSP[km] |
静止推力[g] |
6.0 |
5.0 |
43,715 |
2,436 |
333 |
4,541 |
20.0 |
12.6 |
6,525 |
2,520 |
125 |
9,442 |
注※数値はあくまでも推定です。 推力比 2.08
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その2〜4へつづく |