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1段減速 ベルトユニット 開発物語 その9〜11

その9
真打ちからのコメントです(50プロの社長)

 一部内容が前述の部分と重複しておりますが、それぞれの担当者の意見としてお読みください。

 思い起こせば、電動機パーツの開発を始めたのは、クロスウィンドの角倉真広氏からの「プロペラ・アダプター」の製作依頼が最初だったと記憶しております。

 毎春と秋に開催されております「電動機の集い」に出かけ、最先端の電動機マニアの機体を見せていただき、新しいアイデアの話など情報を集めました。 そんな中で、才川氏とも知り合ったと記憶しております。 同郷ですのでいろいろなアドバイスを頂くために才川宅、また飛行場にお邪魔したり、また、同行させていただき、機体やメカ等の疑問点に納得いくまでアドパイスいただいた記憶があります。

 そもそも、ベルト・リダクション・ユニットのはしりは、単純なギヤダウンユニットから姶まりました。 考え方としては、ギヤの代わりにタイミングプーリーをギヤと入れ替え、タイミングベルトで大プーリーと小プーリーを繋ぐ、それだけの発想です。

 当時のベルト・リダクション・ユニットは、500W以下の入力を前提としていたので、6mm幅のベルトを使用しておりました(注:現在の2段ユニットでは、各種ベルトをテストして1,500Wでも6mm幅ベルトです)。

 その頃マニアの方から、1,000Wを入力したら「モーター取り付け部分が破断した」との情報を頂き、世の中には恐ろしいマニアがいる…ということを知った次第です。

 ちなみに、ベルトメーカによれば、1,000Wの入力に耐えられるベルト幅は32mmが必要…との答えです。 また、3,000Wですと41mmが必要なようです(だいたい、そんなに幅広ではユニットになりません!)。

 実際には3,000Wでも9mm幅のベルトを予定しておりますが、こればかりは実際に飛行機に積んで、それもグリグリやっていただけなければ判りません…しかも、耐久評価も含めた相当な回数を…です!

 今回のシングル・リダクションの発想は、今までの経験を生かして「シンプルで軽く」を前提に構想を練って設計に入ったのですが、スカイウォーカーに搭載したユニットのように、どうしてもプロペラシャフト後方にタイミングプーリーがあって、その後方位置にモーターがある構造の発想しか浮かびません。 試作品は軽いのですが機体のノーズ部分に収まらず、はみ出た場所のノーズを部分的にカットして、ようやく搭載したものでした。

 スカイウォーカーに搭載したユニットは性能的に間題はありませんでしたが、見た目の第一印象は「ツインカムかな?」…なんていうクラブ員もいたほどです。 まあ、いろんな見方があるものです。

 そんな中、F3A参加選手から「プロペラシャフトとモーターの回転方向が逆なユニットは出来ないかな?」…なんていう発想を頂き、才川兄弟とあんなの…こんなの、いろいろな無駄話を含め、当社の工作機械で可能なユニットの構想を練り上げました。

 使用するタイミングベルトは「ツインパワーベルト」と呼ばれる、ベルトの裏表にベルトの山が付いているベルトを使用します。

このベルトは、手にとって見たことがある人は判ると思うのですが、裏表の山が付いているべルトの厚みが非常に薄く、このようなべルトで歯飛びせず、プロペラが回せるのか…が不安になります。ところが、使ってみますと素直に回転を伝え、不安がまったく消えました。

 このベルトを使用し、プロペラシャフト、タイミングプーリー、モーターの位置関係のアイデアを才川弟氏(頭脳労働者)からのメールを戴き、一気に設計が進みました。 また、今回のユニットに「ワンウェイクラッチ」を入れる構想は、「着陸時にプロペラが止まっていると着陸距離が伸びちゃうんだよ。 それとパワーを抜いた時の挙動の制御がねえ」と教えてくれた、才川兄氏(肉体労働者)でした。

 単純に「じゃあ、フリーで回転させれば良いのに」と私。「どうやって?」と才川氏。 まあ、こんなやり取りがユニークなユニットを生み出すのですね。

 設計では、大変に便利なCADを使い、本業の合間にパーツを作り、経理担当の妻からは、「仕事しているのでしょうね!」と目をつけられながらも、出来たパーツを眺めてニヤニヤ、最終的な組み立てを楽しむためにコツコツとパーツを作り、自己満足な世界に浸っております。

 当社設備のエ作機械で「加工可能な範囲」の上で、設計上において大事にしているのは、「見た目がきれいなこと」、そして「左右対称なこと」と「酒の肴になること?」。 これにこだわりながら設計を進めました。今回搭載のモーターは、カーボンパイプの外装を持っておりますので、ユニットの前後方向の構造材パーツとして使い、軽量化と剛性UPに努めました。

 今後は、ページェントの会場でご要望が多かった70クラスと110クラスに搭載可能な「シングル・リダクション」の開発を進め、皆さんに静かなフライトとユニークな製品の提供を進めて行きたいと思っております。

 なお、興味のある方は、弊社ホームページ(http://www.50products.com/)をご覧になってください。

画像125.1kgの機体を正面から撮ってみました。こんな感じです。


その10
まとめとして まだまだ開発途上ですが…

 まだまだ開発途上のユニットですが、充分に汎用ユニットとして成長できる実感を得ております。 「技能労働者」も「肉体労働者」も頑張って、たくさん試作を作って、たくさんテストフライトしてくださいね!

 70〜110クラスの企画もあるようですけど、いつでも計算しまっせ〜の「頭脳労働者」。 やることいっぱいありすぎて〜と「技能労働者」。 どんだけ飛ばせば〜とは「肉体労働者」・・・と三者三様です(画像-11)。

画像11画像-11
50プロダクトの吉川社長。
2段ユニットを手にちょっと得意げ?
だって、F3A日本選手権で多くの選手が使ってくれているんだもん。
しかも、初の表彰台の実績ですからね。


その11

終わりに

 最後になりましたが、ご協力をいただきましたJR-PROPO(日本遠隔制御株式会社)および、ページェントのブースにおいでいただきました沢山の皆様に心から感謝申し上げます。

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