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1段減速 ベルトユニット 開発物語 その2〜4
その2
何でベルトなの?
ハッカーのC50アクロ・コンペティションの、回転中の音を聞いていただければすぐにわかります。
モーター自身の回転音はほとんどしませんが、滅速している「遊星ギヤ」が新品の時こそ静かなのですが、20フライトもすればギュ〜インと、人によっては耳障りなギヤ鳴りがしてきます。
私には、その音がこれまた神経を逆なでするというか、ちょっとイヤ〜な感じなのですね。
この音を出さないためには、20〜30フライト毎に、これまた高いグリス(確か純正品は2gで1,000円だったような?)を使ってメンテする必要があります。じゃあ、ということで考えたのがベルトです。
確かに静かですし、実際に製作してみるといろんなメリットがあることが判りました。
ギヤは、そのかみ合わせを厳密に合わせないと効率が落ちますし、音も出ます。
的確な注油を必要としますが、それでもギヤ自身が摩耗します。 しょせん(?)ギヤは点当たりでしかパワーを伝えていないせいでしょうか?
これに対しベルトは、基本的には「大プーリー」と「小プーリー」が合わせて「360°」でベルトに接しています。
歯飛びしない範囲でベルトの張りを調整すれば、あとはメンテナンスフリーです。
1,500Wクラス用の6mm幅ベルトのユニットでは、既に600フライトをノーメンテでこなしている方もいらっしゃいます。
これには吉川社長自身も驚いていましたが、一番驚いているのはベルトのメーカーさんでしょうね(大体、6mm幅のベルトの規程入力は、いいとこ200Wです)。そして、圧倒的に静か。
ベルトの音もしないこともないですが、人にやさしい音色です。
それと、ベルトダウンユニットの副次的メリットとして、工ンジンブレーキが効くことです。 最近のF3Aパターンは、下降しながらロールを行うなど適度な降下速度コントロールが必要となっています。 ところが、直結アウトランナーではスルスル〜と下りてしまってコントロールが難しく、そのためにコントローラーに可変ブレーキ機能が組み込まれているものもあります。
ベルトユニットですと、この降下具合がやさしいというか、コントローラーのブレーキなしでもある程度ブレーキがかかります。さらに“適度なブレーキ”をかけることで、それこそ「ゆっくり・まったり・穏やか」な下降が可能となり、パターンを行ううえではとても大きな武器になります。
ベルトユニットのユーザーの中には、このブレーキ感覚が欲しくてご使用になっておられる方もいる…とお聞きしています(画像-2)。
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画像-2
一般的なアウトランナー・モーター
(機体に搭載されているモーター)
と、2段減速ベルトユニット。
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その3
デメリットもあります
ベルトダウンユニットも、良いところばかりではありません。 良い所・悪い所をキチンとお伝えするのもメーカーの責任と考えておりますが、ちゃんと書いちゃうところが凄いでしょ!
まずは重量です…そして複雑です。さらに高価です。 そりやあ、直結のアウトランナーのシンプルさとは比べようもありません。
重量の問題はカーボン、高強度ジュラルミン、さらに高価なチタンまで使用して軽量化に努めた結果、ユニット単体では初期段階の製品から、現在ではほぽ1/2にまで軽量化されています。
複雑さについては、基本メンテナンスフリーなので、最初にセットさえしてしまえば、あまり気になりません。
ボルト1本だけで2本のベルトのテンションを、同時にかつ適正にセットできるよう工夫されています(ここら辺のアイデアは、流石に精密加工がお得意な機械屋さんですね)。
なお、F3A用は基本的にモーターまで組み込まれた状態で出荷されていますので、更に確実です(私はテストで散々パラしまくりましたが、自分でやっても簡単でしたよ)。
ところで、ベルトには絶対に注油しないでくださいね。 あっと言う間に歯とびしてベルトがダメになりますので、ご注意ください。
高価な点は、性能と引き換えに目をつぶってください。 でもモーター込みで競技用のエンジンとほぼ同じ価格なので、頑張っていると思います。
そして、重量・複雑・高価というデメリットを軽滅するために、1段ベルトダウンユニットの開発が姶まった訳です。
その4
何で1段なの?
そりゃあ、2段で減速するよリ1段で済めば効率は更に上がるし、部品点数は少なくなって、より安価にできるし…と普通はそう思うでしょ!
でも、ベルト減速の宿命として、あまり大きな減速比を取れないという悲しさがあります。
できるだけコンパクトにするために「大プーリー」と「小プーリー」を接近させ、さらに「小プーリー」の歯数を小さくすれば減速比を大きく取れますが、すると今度は「小プーリー」にかかっているベルトの歯数が少なくなって、大きな入力を受け止められなくなります(歯とびしちゃうってことです)。
いろいろと試作・テストしましたが、1段で減速できる適正値は2.6〜2.7:1が限界でした。
これを、当時主流だったハッカーC50-13XLのKvに合わせるには、2段で2.6×2.6=6.76:1となって、必然的に2段減産となった訳です。
では、なぜ1段が可能になったのか? …それは、クーリング性能と許容入力が向上した「ヘリ用モーター」の出現のためです。
今や3Dヘリの世界では3,500W(=4.67馬力よ!)を超えるる入力で、ブイブイ飛ばせるモーターが存在するのです。
そして、許容入力のみならず、飛行機よりも更に空気の当たりにくい“ヘリのフレームの中”でも巨大な入力を可能とした「冷却能力」を備えたモーターが出てきたのです。これなら1段でもイケルかも?…と思った次第です。
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