トップ > ラジコン技術記事 『タンデム機のセッティング』 その3 ラジコン技術 2008年3月号才川知利氏 タンデム機のスラストはどうするの? 今回のセットアップで頭を悩ませたのが、プロペラのスラスト・セットです。 実機は、前と後ろのペラが反対方向に回る構造で、双方でトルクを打ち消しており、サイドスラストは前後ともに「0°」との情報があります。ただし今回、後ろ側に使用したい逆ピッチのペラは市販品の種類が少なく、やむを得ず前後同方向としました。 そんなこんなで、前側は、一般的な右サイドスラスト(2.5°)とダウンスラスト(1°)で問題なかろうと結論づけをしましたが、後ろ側はまったく見当がつきません。 普通のプッシャー機ですと、アップスラストとサイドスラストとなるでしょうが、重心に近いし、ペラの後流範囲には水平尾翼もありますし…みんなで頭ひねって出した結論は「まっすぐ付けちゃえ!」。 結果、0−0セットとなっています (だって、考えれば考えるほど分からなくなりますから)。 私どもにも50プロ社長の、「やってみればわかるよ! ダメだったら、そのときに考えれば良いでしょう!」の「菌」が感染してきたようです。 結果的には、後ろ側は0−0セットで変なクセは出ませんでした。これも、モーターの回転方向を、電線を2本つなぎ変えるだけで変更できる電動のメリットですね(写真5)。
プロペラを山ほどテスト 前後ユニットのパワー関係は、基本的に前が引っ張る(前側の推力が大きい)ほうが変なクセが出ないであろうと推測し、プロペラは前を16インチ、後ろを15インチとしています(写真6、7)。
問題は前後のピッチ・スピードの設定です。後ろ側のペラは前側ペラの後流内にあり、さらにプッシャー配置ですので.飛行中の負荷が多少は軽くなることが想定できました。 また、プッシャー機はペラの発生している衝撃波が胴体で減衰されない分、ペラから音が出てうるさくなります。 今回はタンデム双発ですし、静かなことが売りの電動ベルト・ユニットですから変な音は出せません。 そのため.想定できるペラを山ほど買い込んで実際にテストしました。 逆ピッチのペラは、選定できる対象が相当限られますので、豊富な中から選定できる正ピッチのペラを前後に使用したわけがここにあります(写真8)。 さらに、このベルト・ユニットの強みである減速比の変更も利用して、最終的なセッティングを決めました。
実際の飛行試験の中で判明したことは、 @ 前側のピッチ・スピードのほうが大きい⇒後ろ側から「ボー」という滑った音が出て、何となく足を引っ張っているような効率の悪さ(引きの弱さ)がある。 A 後ろ側のピッチ・スピードのほうが大きい⇒引きの悪さは感じないものの、プッシャー0独特のパリパリとしたペラ音が耳につき、正直「うるさいな〜、ほんまに電動機かいな〜?」となります。 B 幾度となくテストを繰り返した結果、前側のピッチ・スピードを100とした場合、後ろ側のピッチスピードを103〜105程度にすると、効率も下がらず、プッシャー音も出ない状態となることが分かりました。 これをエンジンでやろうとすると、ニードル・セットも難しいでしょうし、安定してその状態を維持することは、まず不可能です。モーターのKv値による設定以外に、減速比が可変できるベルト・ユニットであればこそのセッティンクの勝利だと自負しています。これだけは、本当にやってみなけりゃ分かりませんでした。 最終的な構成とデータは ●前側 C50−10L +5.5:1ユニット + 5セル5350 + XOAR 16×8Eペラで、61A@7700rpm ●後側 B50−8L +6.1:1ユニット + 5セル5350 + XOAR 15×8Eペラで、53A@7980rpm これで前後ピッチ・スピード比は100:103.6となっています。 このセットで、ページェント本番では実機ばりの安定した飛行と、独特の共鳴音を聞いていただくことができました。 スカイマスターは全備重量が8kgを超える重量級となりましたが、パワー的にはまったく問題がありません。 たぶん、前後のどちらかが止まつても、普通に水平飛行して帰還できるでしょう。 実機は、片方のエンジンにトラブルが起きても安全性を低下させないためのエンジン配置ですが、電動により.さらにエンストに関するトラブルの発生を抑えることかできます。 名称募集中! 今後も、この減速ユニットの耐久テストを続け、いつの日か、世に出せるものにしたいと考えています。 現在、ユニットの名称を考えていますが.良い案がありましたら50プロまでお寄せください(五○式伝動帯減速装置三型とか…)。 50プロダクトの社長は、人のやっていないもの、人がやってうまくできなかったもの、”変ったの”が大好きです。 アイデアひとつで、さらに楽しいRCライフのお役に立つものができるかもしれません。 みなさまのアイデアをお待ちしております。 最後に、今回、このような貴重な体験を提供して下さった50プロダクトの社長(本音では感謝して欲しいのはこっち、と言ったら蹴りが入りそう…)、ならびに掲示板でご教示をいただいた諸先輩に感謝します。 「あの〜2008年のページェントにはさあ…」 「社長、お願いだから”普通のもの”にして…お願い!」 その1 その2 |