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『タンデム機のセッティング』 その2
 ラジコン技術 2008年3月号才川知利氏


  新型ユニットと新たなる挑戦

 この間に、50プロの2段ベルト減速ユニットも大幅に改良され、さらに軽量・コンパクトに進化しました。 基本構成は同じで、大小プーリー、ベルト、モーター・プレートの変更により、3.925:1から6.012:1まで6通りの減速比を選べます。
ダイレクトの場合、モーターのKv(1Vあたりの回転数)は固定ですので、プロペラの選択肢は限られますが、このユニットなら相当幅広いセッティンクが可能です。
ベルトのテンションも、3mmのキャップ・スクリュー1本で簡単に調整できます。

 各軸に対して、1次減速軸をエキセントリックかつ無段階に位相させることで調整が可能なのだと、社長から熱心にCAD画面で説明を受けましたが、ちっとも理解できませんでした。 まあ、ネジ1本一発ギュウで調整完了ですから、進歩したものです。

 ベルトのテンションは、かなりゆるめで問題なく、ギヤのようなシビアなクリアランス調整は不要です。 側面から指で押して5mm程度たわめばOK。これは楽ですよ(写真3)。

 心配されたベルトの耐久性も、1100Wで120フライト以上をこなし、まずは問題なしと判断しました。 しかし.さらなるチャレンジと、将来のF3Aクラスのユニットを見据えて、それまでのモーター軸回転数については30,000rpm前後から−気に45,000rpmオーバーを狙いました。

 比較対象として、電動F3A機の定番である八ツカーC50-13XL&イントロ6.7:1ギヤの場合、モーター軸は1292[Kv] ×34Vとして、約44,000rpm回っていますので、定評のあるこのモーターを使おうとした場合、同程度の回転数におけるベルトの耐久性と信頼性を確保する必要があります。 使用しているベルトは、従来からの−般工業規格品で、メーカーのデータにも1万回転以上は設定はありません。 それをメーカー担当者が呆れる3倍の回転数で使用し、一応の実績が得られましたので、さらに1.5倍してのチャレンジというわけです。

 社長に「ベルト大丈夫かな〜? 1000W入れてるときに切れたら怖いよね〜?」とかブツブツ申しておりましたら、軽〜くひとこと。「誰もやったことないんだから、やってみれば分かるよ! 切れたら、そのときに考えれば良いでしょう!」 って…。そりゃあそうでしょうけど、その切れる瞬間に送信機を握っているのは私。 浮いている機体は私が手塩にかけた機体なんですけど…もう毎度この調子です。

 まあ.実際には、さらに回転上げて48,700rpm!で使用していますが、今のところ何ともありません。今後、さらにテストを継続して検証しますね。

2段減速と、従来のベルトユニット
写真3/左が新型の2段ベルト減速ユニット 右が従来ユニット。
新型は3.925:1から6.012:1まで、なんと6通りの減速比を選べる。


  トラブル回避の秘術

 よく覗いては(隣の家の若い娘ではない!)、大変に参考にさせていただいていますネット上の掲示板に、「がんばれAP36」さんの「DragonのEPコテ板」があります。ここでは、掲示板の趣旨のとおり、諸先輩方の電動機に関するコッテリと濃い内容が、理屈を並べてトコトン話し合われていて、大変に役立つ情報が載っています。

 今回のような大型の電動機になりますと.いやおうなく電源やモーターのコードを延長しなくてはならない場合がありますが、この掲示板にその際のトラブル防止法が載っておりました。 一部を抜粋しますと、ブラシレス・コントローラーについている線を延長する場合には、
 (1)延長する場合は、モーター側を延長する。止むを得ない場合は電池側。
 (2)延長する長さを最短とすべきは原則ですが、プラス線とマイナス線を乱さずに
   まとめること。 最悪なのは、バラバラでループ状になっている状態。
 (3)電源側を延長する場合は、シュルツのホームページを参考に、コンデンサを追加する。

 これらの理由として、電池とコントローラーの間隔を延ばすとまずいのは、ワイヤーのインダクタンスというものが増えるからだそうです。 運転中の電池とコントローラーの間には、一見、電流が流れっぱなしのような気がしますが、実際には短時間のON/OFFが行われています。 特にハ−フ・スロットルのときには、類繁にこの状態が発生しています。

 これが長いワイヤーだと、ON/OFF時の電圧の波が大きくなり、コントローラーのコンデンサに無理がかかって波を吸いきれずに飛ばしてしまったり、誤動作(起動の失敗など)が起きるということです。 延長するワイヤーの抵抗は関係がなく、ロスを滅らそうとするために良い(抵抗の低い)ワイヤーを使えば、そのぶん、波打ちの電圧は増えます。 どうしても延ばしたいときは、コントローラーにコンデンサを並列で追加すれば改善きれるそうです(写真4)。

コンデンサの追加
写真4/コントローラーの電源コードに追加したコンデンサ。

●参考:シュルツのホームページ(ただし英語です)
http://www.schulze-elektronik-gmbh.de/guide/gfutc-de.pdf のmountinginstructions

 今回のスカイマスターの場合、電池やコントローラーの配置場所に制限を受けますので、大変にありがたい情報を得ることができました。みなさんも、ワイヤーの長さにかかわらず、起動時のガガガという不良や中速域での不安定さがある場合は、このようにコンデンサを追加すると改善される場合がありますので、お試しの価値はあります。 コンデンサは秋葉原の部品屋さんで1個200円程度でしたので、お安いものです。

 パワー関係の機材は、経費節減のため手持ちのものでセットしましたので、統一が取れていませんが、トラブル回避のため前後で完全別系統とし、コントローラーからの信号線をYハ−ネスでまとめて受信機に接続してあります。この中で、前記のコンデンサの追加と、信号線へのノイズ防止のフェライトコアは必須です。 延長ワイヤーは、ロス低下のため太い12ゲージとし、銀入りのちょっとお高いシリコンコードにしてあります(図1)。

ユニット構成図
図1/電動タンデム機のユニット構成図 (クリックすると拡大表示)


その1 その3へつづく

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