●脱線その2
ところで、何でギヤダウンなのでしょう。 エンジンだってモーターだって、出力はW(ワット)で表示できます。 ちなみに、1馬力は750Wですね。 たとえば、25のエンジンはまあ0.5馬力(375W)くらいでしょう。 モーターなら、10Vx37.5A=375Wとなりますね。 リポ3セルで40Aといったところでしょう。
一方、電動関係では、その先駆者で大先生である角倉真広さんがQRPのホームページのテクニカル・コーナーで、アストロモーター・八ンドブックの計算式をアレンジして解説しておられます。 あるプロペラを回すための必要な力(W・ワット数)は
W=(D/10)4 ×(P/10)×(N/1000)3 ×0.45
D=フロベラのダイヤ(インチ)
P=フロペラのピッチ(インチ)
N=フロペラの回転数(毎分)
最後の0.45はAPCのスポーツ・プロペラを対象とした換算値です。
たとえば、APC9×6のペラを12000rpmさせる必要W(ワット)数は、
(9÷10)4 ×(6÷10)×(12000÷1000)3 ×0.45=306W
となります。
実際、モーターの場合には、モーターのロスなどがありますので、効率80%として、
306÷0.8=382W … 10V 38.2A
程度と推測できます。
また、ピッチ・スピード(速度)は
Sp=(P/10)×(N/1000)× 15.24(km/h)
となり、ピッチ6で12000rpmなら、
(6÷10)×(12000÷1000)× 15.24 = 109.7km/h
静止推力は、
Th = (D÷10)3 ×(P÷10)×(N/1000)2 × 22
となり、
(9÷10)3×(6÷10)×(12000÷1000)2 × 22 = 1386g(約1.4kg)
となります。
これはあくまでも目安ですが、この計算式と実際のデータを比較できれば、定数の「0.45」なり「22」を調整させることで、より実測に近くできます。 角倉さんによれば、この「22」もプロペラの形状(幅とか翼型)によって、「20〜34程度」まで、かなりの幅があるようですが、計測値をもとに自分なりの補正値を持つと、相当便利に使えます。
で、ここからが本番。
9×6の12000rpmは、306Wで109.7km/hr出て、1386gの推力があることになりますね。 では、同じ306Wで回せるピッチとダイヤの組み合わせですと、11.5×10を7300rpmで、306W、111.3km/hr、1783gと算出できます。 同じワット数で同じ速度で…、静止推力は29%(397g)増しになっていますね。
つまり、ピッチ・スピードさえ確保できれば、大きなダイヤで大きなピッチのプロペラを回した方が効率が良いことになります。 ところが、大きなプロペラをゆっくり回せるモーターとなると、Kv値の関連で限られてしまいます。 例題の11.5×10で7300rpmとなると、リポ3セル10Vとして、7300÷10[V]
÷ 0.8(負荷係数)=912 程度のKv値のモーターを選択することになります。
最近のアウトランナー・ブラシレスでは、このようなKv値のモーターも増えてまいりましたが、広く一般に入手可能なRCカー用のブラシ・モーターはもっとKv値が高く、4000〜5000程度のものが多いようです。 その高いKv値を欲しい回転数に変換するために、ギヤBOXが必要となるわけです。
また、ブラシレス・モーターも一般には高いKv値のものの方が効率が良いようです。 ただし、ギヤも抵抗ですから、一般的には一段でマイナス5%程度のロスが発生します。 インライン・ユニットでは、2段減速ですから、普通なら10%程度のロスとなるはずです。 50プロのインライン・ユニットでは、超精密加工され、厳密に設定、加工されたギヤのクリアランスや歯型により、ロスを最低限に抑えています。 たとえギヤで10%ロスしても、先ほどの計算のとおり、静止推力で29%増しになりますから、差し引きしても大きなプロペラを回す方が有利なことがご理解できると思います。 F3Aでは、ギヤダウン・モーター+22インチの巨大ペラで、今までとは異次元の飛びを実現していることからも分かりますね。 あ〜毎度脱線の方が長いなあ〜!
|
表1/マーベリック50プロに使用したパワーユニット
ギヤダウン・ユニット
ピニオン・ギヤ
ギヤ比
モーター
スピード・コントローラ
バッテリー
プロペラ |
50プロダクト 540インライン・ユニット
17T
4.94:1
レーナーBASIC 4200ブラシレス
JETI-70-3 P
フォックスコーポレーション/キングコブラ3 S3200
エアロノート12x10折りペラ |
|
|
このようにして開発し、先のRC航空ページェントでお披露目したマーベリック50プロのデータは、表1のとおりです。 これで地上8300rpm/58A/10.3V=597W入力となっています。 このとき、モーターの回転数は実に8300×4.94=41000rpm、1次側の減速軸は17600rpmも回っていることになります。 現物を見ていただければ、この小ささでねえ〜と、驚かれると思いますよ。
さて、計算式によりますと、534Wで静止推力は約2.6kgです。 モーターやギヤを含めた効率が90%ですので、実際はもう少し実ワット数が少ないのでしょうが、それにしてもけっこう良いデータです。
機体は前述のとおり、旧ルールのF5B機で、軽量・高出力のキングコブラ3200のお陰もあり、全備重量はわずかに1.05kgしかありません。 つまり、重量:静止推力比は1:2.5となっています。 その結果、爆発的な上昇力を得ることができました。 推力比が2.5もあるとどうなるか…、効率良く上昇させるためには…などと考える必要はまったくありません。 真上にさえ向けておけば、何も考えなくても5秒で点になります。 クラブ員いわく、「地対空ミサイル」です。
航空ページェントの前に行われた「2005年秋・電動機の集い」では、けっこうな強風下、200m往復のタイム計測で平均速度158kmをたたき出しました。 内心ギヤが持つかとヒヤヒヤものでしたが、平気でこなしてくれました。 このときの回転数は、プロペラの滑りを無視したとしても、10370rpm! モーター紬では51200rpmです! まあ、よく壊れないものです…って、他人事みたいに言ってよいのかしら?
ページェントでは、グライダーの部で出場しましたが、良い意味で、お客様の予想を裏切る八イパフォーマンスを見ていただけたと思います。 発進直後のそのまんま急上昇に対し、観客席からの「うお〜!」という反応を背中でお聞きしながら、内心ニタニタしておりました。 ここまでくれば、もう世の中に出しても大丈夫でしょう。 |