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『電動2段ベルト減速ユニットモーター&バッテリー選びのポイント』 その3
 ラジコン技術 2007年4月号才川篤志氏

  電池の選択

 ここで,この機体とユニットにどんなモーターや電池を選ぶかの手順を書いてみます。この中での数値は、私の過去の経験から、体験的に自分なりに定めているものですから、理論的な解説はご勘弁ください。
 選んだ機体のシルキーウインドOTMは、K&Sのカタログ・データによればOS FS-52エンジンが指定で,全備重量が2.7kgとなっています。まあ,電動化により多少重くなることも想定して,予想重量は3kgとしました。過去の経験から、機体重量1kg当たり300Wを入力すれば,無限垂直上昇が可能な程度のパワーになりますので,この機体の性格にはちょっとオーバーパワーとは思いましたが、3kg × 300W/kg = 900W と設定します。
 モーターやベルト・ユニットの駆動ロスをあまめで80%としますと,900W × 0.8 = 720W が実際の出力の目安となります。OS52が最大で0.9馬力×750W=675Wですから、機体重量が重めになっても,900W入力すれば.OS52クラスを搭載した場合と,同程度以上の動力性能を確保できそうです。
 入力が900Wと決まれば,次はモーター選びです。OS52が0.9馬力を発生している回転数は,カタログ・データから12000回転/分(rpm)ですが,シルキーウインドOTMの雰囲気では回し過ぎの感じです。体にはデッカ〜イ,バルーン・タイヤも付いていますので,大きめのプロペラで7000rpm程度を狙いました。ベルト・ユニットの減速比が4:1なので,モーター軸回転数は4倍の28000rpm程度となります。
 ここで,モーターを決める前に電池を選びます。900Wを安定して出力できるリポは,20C放電が可能なことを前提とすれば,リポ4セルとして14V(注1)×65A=910Wで65A÷20=3.25A。つまり4セル3250mAh以上,リポ5セルとして17.5Vx52A=910Wで52A÷20=2.60A。こちらは5セル2600mAh以上ということになります。ただし,これは最低ギリギリ狙いの数値ですので,余裕を持った選定が必要となります。
 また,連続20Cでは理論上の最大放電(ここまで放電させたら壊れる数値)でも3分しか飛びません。まあ,常にフル・スロットルで飛ばすわけではありませんが,中速を中心にしてもギリギリ5分でしょう。ちょっと短いですね。そんなことから,20C放電可能な5セルで3000mAh程度あれば,7〜8分は飛ぶだろうと目安をつけました。
 最終的には,最近の電動関係の愛好者の問で評判の高い「インテレクトのペガサス3300−20C」に白羽の矢を立てましたが,問題が…ネット上のカタログを見ると4セル3300mAhまでしかない!(ウッソ〜!)。そこで,駄目もとで会社に直接連結を取りますと,元気の良いオッサン(失礼!社長)のおっしゃるには「ウチは言われればナンポでも作りまっせ〜!」の有り難いお言葉に3300−5Sのオーダーパックを作っていただきました。
 このリポの入手により,900W時では52A(15.8C)相当ですから,かなり余裕がありそうです。仮に20Cとすれば,3.3×20Cx17.5V=1155Wまで放電可能ですから,今後パワーアップにも対応できそうです。
(注1)リポは公称3.7V/セルですが,負荷をかければ電圧は下がります。20C放電をうたう高性能なセルであれば,満充電放電初期20C時点の電圧は3.3〜3.5V程度はあるはずです。逆に,自己のうたう放電レート時にこの電圧を出せないセルは,誇大広告と言えそうです。
 インテレクトのセルは,使い始めの冷えた状態からの放電初期で,14C時に3.48Vを出していますので,かなりの高性能と言えるでしょう。

   モーターの選定

 さて,電池か決まりましたので,モーターの選定を続けましょう。
 先ほどモーター軸回転数で28000rpmを目安に選定することになりましたので,あとは電圧が分かれば,おおむねのKv値が算出できます。ここで単に軸回転数を電圧で割るだけではいけません。必ずロスがありますので,減速して使用する場合は,理論回転数の85〜90%程度が効率的にオイシイところとなります。よって,28000rpm÷17.5V÷0.88=1820(Kv値)程度のモーターとなります。
 次にモーターの大きさですが,900W入力に対応するモーターは,インラインでモーター重量100g当たり300〜350W,アウター・ローターで250〜300W程度が限度です。リポ5セル対応でKv値1800程度のアウター・ローターはありませんので,必然的にインナー・ローターからの選定となります。900Wですから,3〜3.5で割ると.300g〜260gのモーターを探すことになります。
 条件を統合して,Kv=1800程度で重量が300〜260gのモーターを探しました。その結果,レーナーの1940-9でKv=1742,重量280gのモーターに決定しました。ちょっとKvが低めですが,効率の良いことでは定評のあるレーナーですから,大丈夫でしょう。

   製作とリンケージ

 機体はARFで,非常に良くできています。胴体はクラス製塗装済み。 主翼はバルサ・リブ組みでフィルム張り,細かいリンケージ部品も完備されています。また本機の特徹でもある大きなバルーン・タイヤも付属しており,独特の雰囲気があります(組立中の写真6〜10参照)。
 主翼の接合,水平尾翼の取付け,減速ユニット取付け,メカ・リンケージと作業はスムーズに進みました。何の難しい箇所もなく,あっけなく完成です。パイロットはギロロ君で決まり。
バッテリー・ペイはちょうど重心位置近くの胴体内に3mmベニヤで作成しました。
全重量は3020g(バッテリー含む)と,指定よりも"チョイデブ"となりました。

写真6
エルロン・サーボ(JR−ES539)取付状態
写真7
サーボの取付部はあらかじめ瞬間接着剤を一滴垂らす
写真8
主翼接合は工ポキシ接着剤でガッシリと・・・

写真9 胴体下部に開けた
エア抜きホール

写真10 メカ積み。受信機は側面に取り付ける

その2 その4へつづく

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